相転移・相分離の動力学、パターン形成の動力学などを中心的なテーマとして、理論解析や数値シミュレーションを用いて研究を行っている。 また、非平衡・非線形物理の対象として、高分子・液晶・コロイドといったソフトマターや、液体金属などの不規則な電子系の物性研究も行っている。 研究対象として境界領域にあるもの、未開拓なものに重点を置きたい。 また、実験グループとの共同研究も積極的に進めていきたい。
相転移に伴う不均一構造のダイナミクスは、多くの対象と研究があるが未だ分かっていないことが多い分野である。 身近な例として、流体の液体・気体間の相転移はよく知られているが、温度の不均一性、濡れ現象や電場などの外場が関与した場合に、どのような流動現象が引き起こされるか未知の側面が大きい。 せん断流動場、液晶の欠陥の関与する非平衡・非線形流動現象も魅力的分野である。 このような問題に対し、不均一構造、時空間階層構造をキーワードとして問題に取り組んでいる。
ソフトマターは、高分子、液晶、両親媒性分子、コロイド、蛋白質などのソフトな力学的性質を持つ物質群の総称で、物理学・化学・生物学・材料科学の分野にまたがる学際的な性格をもつ重要な物質群である。 ソフトマターは文字通り柔らかく、流動・電場などの外場に対し敏感であり、大変形の結果、容易に非平衡相転移が誘起される。このためソフトマターは非線形・非平衡物理の研究の宝庫となっている。
電子状態の変化を伴う相転移や電子系のダイナミクスは、簡単な統計力学模型では理解できない場合が多い。例えば、高温・高圧下で膨張する金属の液体から気体への相転移は、電子系の金属-非金属転移と原子間力の変化が絡み合う複雑な現象である。また、高強度X線などの強い外場は、固体中の多数の電子を瞬時に励起し、光吸収係数などの物性値の劇的な変化や、電子の非断熱遷移・量子振動といった非平衡現象を引き起こす。統計力学と量子化学の手法を組み合わせた多体理論を開発し、これら諸現象の数値解析を行っている。