ソフトマターにおける相分離

粘弾性相分離

 我々は、高分子溶液などの動的に非対称な系において、相分離した2つの相の粘弾性特性が大きく異なる場合、通常の相分離現象とは全く異なる挙動を示すことが実験的に見出し、粘弾性相分離と名付けた。そこで、この粘弾性相分離現象について、過渡的ゲルの形成という点に着目し、異なる数値シミュレーション手法を用いて研究を行った。以下に、それぞれの研究の概要について述べる。

粗視化モデル

 粗視化した濃度場、速度場、応力場を扱った二流体モデルに基づくLangevin方程式を数値的に解き、粘弾性相分離のパターン発展の様子を調べた(図1)。 実験で見られている過渡的ゲルの特徴を考慮するために、通常の二流体モデルで扱われているずり応力に加え体積応力を取り入れた。 この体積応力に関する弾性率は、過渡的ゲルの緩和を実効的に表すよう濃度場に関する解析関数などではなく、初期濃度付近で大きく変化するステップ関数の濃度依存性を仮定した。 その数値シミュレーションの結果、以下のことが分かった。




図1: (a)実験結果(高分子混合系(PS/PVME)の顕微鏡観察)、(b)粗視化モデルによる数値シミュレーションの比較。




図2:  2流体モデルによる粘弾性相分離現象の時間発展の様子。



図3:  2流体モデルによる粘弾性相分離現象の時間発展の様子。(3D)
Animation: 通常の相分離、 粘弾性相分離。

Disconnectable spring model

 流体粒子ダイナミクス法を用いた研究により、動的に非対称な系においては相分離初期において過渡的にゲル状に振る舞うことが示唆された。 このゲル状態を、その長さに依存した確率で切断するバネを用いてモデル化し、粘弾性相分離の構造発展の様子を調べ、次のことが分かった(図4)。



図4: (a)実験結果(高分子溶液(PS/DEM)の顕微鏡観察)、(b)DSDによる数値シミュレーションの比較。



図5: DSDによる粘弾性相分離。(3D)



図6: バネ長のばらつきが最大になるときの相分離構造のE-T依存性。()の中はそのときの時刻


イオンを含む流体混合系における相分離

 温度変化によって相分離する水油混合系を考える。 相分離する温度域では、重力等により最終的にマクロに二相に分離した状態になることはよく知られている。 塩を混合溶媒に添加すると、正負イオンは一般に親水性であるため、塩は水リッチ相に溶け、界面張力を増大させることが知られている。 小貫らは、正負イオンのうち一方が水が嫌いな塩(Antagonistic塩)を水油混合系に溶かすことで、二相間の界面張力が下がることを見出した。 そのとき、水油界面でナノスケールでイオン間相分離が起こり、大きな電気二重層が形成される。
 二成分流体のダイナミクスを記述する model H に粗視化したイオンの濃度を導入し数値シミュレーションを行い、その相転移ダイナミクスを調べた。 ある温度、イオン濃度域ではブロック共重合体のようなミクロ相分離パターンを示す(図7)。 また、平坦な界面にそのようなイオンを添加することで、界面が不安定化するエマルジョン化することを示した。




図7: Antagonitic 塩を含む水・油混合液体の相分離パターン。$n_0v_0$は規格化したイオン濃度、$\chi$は温度に依存するパラメータ。

流体系の相分離機構と流体力学効果

 流体系における相分離現象は,流体モデル(model H)によって記述されることが知られている。 我々は,流体モデルに基づく数値シミュレーションの結果,対称組成相分離において, 流体力学的効果が大きい場合,流体管の不安定性に起因する系の粗大化に, 内部の濃度場が追従できず,相の内部が熱力学的に不安定,準安定になり,一度のクエンチで, 二度,相分離する効果(Hydrodynamic Interface Quench Double Phase Separation)を 見出した。




図8: 界面クエンチ効果による二重相分離現象。
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