粒子を含む流体混合系の相分離ダイナミクスを、溶媒を二成分液体とした流体粒子ダイナミクス法を用いて調べた。
一般に粒子表面に対する相分離した二相の親和性は異なっており、親和性の高い相が粒子を覆うようになる。
ぬれやすい相で覆われた粒子には、二相間の界面張力により実効的な引力が働き、粒子は凝集していく。
図1は、添加粒子の数を変えた場合の相分離構造の変化を示したものである。粒子に対してぬれやすい相は、粒子が少ない場合(a)と多い場合(c)では連結相となるが、中間的な場合(b)ではドロップレット構造を形成する。また、相分離構造は粒子の易動度にも大きく影響され、様々な相分離構造を形成することが分かった。
ヤヌス粒子とは粒子の北半球と南半球で表面の物性が異なっている粒子である。 その特異な性質から近年、凝集構造を示すタンパク質や、active matterのモデルとして注目を集めている。 相分離する混合溶媒に混入することでヤヌス粒子を界面活性剤として使うことができる。 その相分離ダイナミクスにおいて、粒子はその方向に移動する傾向があるであろう。 我々は、この現象を用いて、ヤヌス粒子の自己駆動運動を起こすべく、流体粒子ダイナミクス法を用いた数値シミュレーションを行った。 ヤヌス粒子として半球が混合溶媒の片方の成分にぬれやすく、もう一方の半球は中性である場合を考える。 温度を一定に保った状態では、最終的に相分離構造が平衡状態に達し、粒子の運動は起こらなくなる。 そこで我々は、温度を相分離温度の近辺で周期的に変化させることで、粒子を動かし続けることができることを見出した。 相分離温度より低温状態であるとき、ぬれやすい界面の付近で相分離が促進され、そのドメインの成長により粒子の周りに非対称に流れ場が誘起される。 その流れ場により一方向に押し出されるように粒子は移動を示す。 しだいに粒子の運動は遅くなるが、温度を上げることで相分離したドメインは混ざり合い、初期の状態にリセットすることができる。 再び温度を下げることで粒子は再移動し、これを繰り返すことで粒子は一方向へ運動を続けることができるようになる。 ここで高温にある時間帯では、混合は拡散によって起こり、流れ場が小さいので粒子は運動しない。 この一方向への粒子運動の速度や、指向性は混合溶媒の体積分率や、温度を変える周期に大きく依存する。